有機JAS、辞めました。USDA有機認証、始めました。:有機JASの問題点その2

2014年1月の販売開始から、当店ベルベット・コネクションでは有機JASの認証団体に登録した上で、有機JASの認証がついたコーヒー製品を販売してきました。 しかし2015年7月現在を持ちまして、有機JASを辞め、USDA(アメリカ農務省)の有機認証を取得したフェアトレードコーヒー豆を製品に使用することに致しました。 ここではその理由と新しく導入するUSDA有機認証に付いての説明、及び関連して有機JASの問題点をお伝えしたいと思います。あくまで有機製品の加工業者としての意見ですのでその点はご了承願います。

 

・有機JASを辞める最大の理由:フェアトレードかつ有機JASのコーヒー豆が入手困難で、仕入れが安定しない。

有機JASを辞める最も大きな理由がこれです。創業当時はまだ日本国内でも、小ロットからフェアトレード認証+有機JAS認証を取得したコーヒー豆を仕入れることが可能でした。しかし現在ではこの両方の認証を取得した豆は、入手が非常に困難な状況にあります。また過去一年半の操業において、特定の銘柄の豆がなくなりブレンド内容やラインナップを変えざるを得ない状況が何度か有りました。 このような状況を鑑み、当店では日本の有機規格である有機JASではなく、アメリカ農務省の有機規格であるUSDA有機認証を取得しているコーヒー豆を取り扱うことに致しました。 そもそもの話、有機JASとは日本の有機規格であり日本でしか(基本的には)通用しない認証です。なので有機栽培を行っているコーヒー農家、農園にとって、有機JASはそれほど優先度合いが高い認証ではありません。(もともと日本向けの販売を前提としている場合は違ってくると思いますが) フェアトレードかつ有機栽培のコーヒー豆は数多く存在します。しかしこういったコーヒー豆が取得するのはアメリカやヨーロッパの有機認証なのです。こういった豆を視野に入れれば仕入れの幅が広がり、結果お客様の満足につながっていくと思います。

 

・USDA有機認証のクオリティーとは

さて、有機JASをやめてUSDA有機認証に切り替えたわけですが、この「USDA有機認証」の有機としてのクオリティーはどうなのでしょうか? ざっくばらんに言えば有機JASと「同じ」です。 どうして同じかといえば、日本の農林水産省とアメリカ農務省がお互いの国の有機規格を「同等である」と認めているからです。

農林水産省:米国有機規格との同等性について

USDA有機認証も有機JASと同じく・・・

・有機栽培に使う土地は一定期間以上(USDAは3年)、禁止されている物質を使用してはならない

・禁止・使用可能物質リストに従った栽培

・遺伝子操作の禁止 などの基準に従って栽培されています。

アメリカ農務省 有機栽培概要 使用禁止・可能物質一覧 US Governmet Publishing Office

上記ページは英語になります。

 

・有機JASの問題:海外の同等な有機認証を得た農産物でも、有機JASマークを付与できない この点については過去のエントリで書いたので抜粋したいと思います。

現在農水省は有機認証の同等性を認めた国(アメリカ、EUなど)で生産、加工された製品に関しては、その製品を有機JAS認定品として国内で販売することを認めています。同等性を認めていない国の農産物に関しては、有機JASの登録認定機関が現地に出張し、その農作物を認定することで有機JASとして国内で販売することができるようになります。 アジアや南米の生産者は、アメリカやEUが認めた海外の登録機関の審査を受け、アメリカやEUの有機認証を得ています。つまり実質的にアメリカやヨーロッパの有機製品と同等の有機性を持った農作物です。しかしこれらはなぜか、有機JAS認証製品として日本で販売することはできません。

例えば、グアテマラなどの第三国で生産、包装されUSDA有機認証を得たものが、アメリカ国内で最終的に加工、包装されUSDA有機認証を得ていればそれは有機JASマークを貼付して販売できます。 しかしグアテマラからUSDA認証を取得した豆を日本に輸入して加工、包装すると、それには有機JASマークを貼付できません。使用している豆自体の有機性は全く同じであるにもかかわらず、です。

なぜアメリカやEUの有機認証を取得した、海外(アジアや南米)の農作物が有機JASとして認められないのか、農水省に電話で問い合わせてみました。その電話では次のような返答をいただきました。 1:アメリカやEUとそれぞれお互いに有機の同等性を認めるのは、自国の輸出促進のために行っていることである。海外のアメリカやEUの有機認証を取得した農作物に対し、有機JASとの同等性を認めても、輸出促進につながるわけではない。 2:アメリカやEU側も、有機JAS認証を取得した海外の生産者に対してその有機同等性を認めていないので、それに合わせている。 ……ということです。

有機規格とは「消費者に混乱なく、一定の有機製品を提供するための規格」ではないでしょうか?「輸出の促進」という話がでてくるのが、ちぐはぐな印象を受けます。 そもそも特定の国内の農産物は関税などで、有機の認証がどうこう以前に保護されていますし、別にグアテマラのコーヒーが有機として認められたからといって、国内のコーヒー農家(ほぼいない)に被害があるわけでもないと思います。

この状況が改善することを願いますが、以前農水省に電話でお伺いした時に「今後特に第三国でUSDA有機認証を得たものを日本で有機として認める予定はない」と聞いたので、おそらくシステムの改定は望み薄でしょう。

しかし本当に輸出の促進にならないとか、アメリカやEU側に合わせているといった理由で有機JAS認定の範囲は決められているのでしょうか? 第三国における海外の有機認証(USDA有機認証など)が日本国内で有機JASとして認められないとすると、農林水産省に認められたの有機JAS登録認定団体が海外に出張して認定する、という流れになります。つまり仕事、利益が増えるわけです。 これは逆もありえます。第三国の農作物が有機JASの認定を得ていても、アメリカ国内で有機として加工販売するためには、わざわざアメリカ農務省が認める団体にお金を払ってUSDA有機認証を得る必要があるのです。

正直いって「有機なのに有機として販売できない」この現状を考えると、裏に何かしら認定がらみの利権、例えば認定団体への天下りやキックバックが絡んでいるのではと、不信感が募ります。 去年はバターの値が上がり、スーパーから姿が消えましたがこれも農水省の規制、利権がらみという記事がありました。

オルタナ|バター値上げの背景に、農水省の「白モノ利権」

農家が幾つもの有機認証をとらなければいけないこの現状も、こういった「利権」が絡んでいるのかもしれません。

 

・たとえ仕入れの状況が改善しても、あまり有機JASには戻りたくない・・・

小規模事業者の壁 一番初めに書いた通り、当店が有機JASをやめた一番の理由は、有機JASコーヒー豆の仕入れが不安定だからです。しかし将来的に有機JAS+フェアトレードという豆が安定的に仕入れられるようになっても、(加工業者としては)有機JAS認定商品を積極的に販売したいとは思えません。お客様からの強い要望があればもちろん考えますが・・・。

理由はいくつか有りますが、ざっくりと言えば小規模事業者、そしてコーヒー焙煎事業としては金銭的・手間的にきつい、ということが挙げられます。前回のエントリと重複する部分も有りますが、つらつらと書いてみたいと思います。

・年間認証料金15〜20万円。(認定団体により違います)

現在一人で営業している小規模事業者としては結構辛いです。

・ブレンド内容を変更しづらい。

ちょっとでも変更するとその都度ブレンド内容を申請しなければいけません。そして小規模な事業の場合、そういうことは頻繁に起こりえます。また新しい豆を少量仕入れ、有機として販売、ということもやりづらいです。

・記録が細かい、意味が不透明。

焙煎、包装、販売のそれぞれを別々に日付込みで記録する必要が有ります。記録やチェックが不必要と思っているわけではないのですが、例えば最終的な販売量のみ記録し仕入れ量の照らし合わせる、製造した製品に使用した原材料の麻袋を記録する、などその事業所、加工食品の種類によって工夫をし、簡潔に十分な記録はできると思います。でもそこら辺の融通はほとんどききません。逆に有機JASで要求される(形式的には)大量の記録やチェックが、非有機製品の混入事故などの防止としてどれほど効果があるのかも疑問です。

特に疑問だったのが、有機JASマークを印刷したラベルの数の記録義務です。ラベルを印刷した数を記録しなくてはいけないのですが・・・最後まで意味がよく分かりませんでした。誰かがラベルを盗んで偽有機商品でも販売するのでしょうか?有機JASではない製品にラベルが間違ってついてしまうのを防ぐためなのでしょうか?

正直手間の割に、あまり効果があるとは思えないのですが・・・。だってラベルとかパッケージが違ったら、その日上がってくる製品の数があわないわけですから、その時点で気づくと思うのですが・・・。 この点について有機JASに詳しい方に聞いてみると「意味を考えたら負け」と言っていました。

・生産行程管理者の資格が厳しく少人数の事業では厳しい

生産行程管理者という資格を持った人が製造し、格付責任者という人が最終的に包装製品をチェックする必要がありますが、これらの資格は食品関係の仕事に2年以上従事していた人しか取れません。 これだと一人で営業している自家焙煎店が週に一回とか、夏休みのときだけとかにバイトさんに焙煎を頼む、というのもできませんね。 ちなみに私は「高校生の時マクドナルドでバイトしてた」ということで、この条件を満たして資格取りました。・・・本当にこの資格条件は必要なんでしょうか?

 

上で言及した問題点は、大きな事業者ならそれほど負担にならないと思います。必要な原材料を大量に確保して、大工場で一気に生産し、何年も働く正社員の従業員が何人もいて、一日の売上何百万あたりに対して一回記録をすればいい・・・という具合です。 しかし小規模事業者は売上がはるかに小さいにもかかわらず、記録の手間、申請の手間、金銭的な負担は大規模事業者と同じように掛かります。

その上焙煎したてを届けるためにこまめに焙煎を繰り返す当店のような業種は、更に負担が重くなります。正直、現在の有機JASのシステムは、それなりの生産規模を持った事業者のことしか考えられてなく、小規模な事業者は無視されているという印象を受けます。

有機JASの認証をもうやりたくないと思うのは、単純に手間と金銭的負担が大きいからというわけではなく、「意味のない手間や制限が多い」、「小規模事業者が無視されている現在のシステムにコミットしたくない」という思いがあります。

 

・まとめ:有機は取り揃えていきたいと思いますが有機JASは当分見送ります。

長文になってしまいましたので、最後に有機JASを辞める理由をまとめたいと思います。

・フェアトレード+有機JASという豆の仕入れが安定しない。

・USDA有機認証も十分に信頼できる有機性を持っており、仕入れが安定する。

・有機なのに有機JASとして農作物が使えない状況であり、現在の有機JASのシステムと農水省の姿勢に懐疑的。

・現在の有機JASの認証システムは大企業、中企業向けであり零細企業にとっては手間的に、金銭的に負担が大きい。

・手間や金銭的な負担が大きければ、それは販売価格の上昇やサービスの低下(納期までの日数が増える、アルバイトを使えないため休業日が増えるなど)に結びつきやすい。しかし、その手間が有機性を確実にし消費者の信頼を得るための「意味のある手間」とは思えないので「単なるマイナス」でしかない。

・小規模事業者が非常に使いづらい現在の有機JAS認証システムに参加、容認することは、システムの改変につながらない。

 

有機JASは辞めることになってしまいましたが、今後も有機栽培によるコーヒー豆を取り揃えていきたいと思います。

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